ブックタイトルABS breeders journal2017

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概要

ABS breeders journal2017

ABS Technical Services体外受精技術の現状と課題ABSテクニカルサービス課高山茉莉体外受精卵の普及受精卵移植技術は、受精卵の生産、品質評価、保存技術、レシピエントの選定、移植、妊娠、分娩といった繁殖技術の組み合わせから成り立つ技術です。なかでも、生産する受精卵には体内受精卵と体外受精卵があり、どちらもより効率的な生産方法、保存方法、受胎率の向上のための研究が国内外問わず行われています。近年、経腟採卵(OPU: Ovum Pick-Up)技術と体外受精(IVF: In Vitro Fertilization)技術の普及から、世界的に体外受精卵の移植頭数が増加しています。日本では、体外受精卵の移植頭数が2009年以降増加し始め、2014年には前年と比較し、約5000頭増加したことが確認されています(図1)。また、世界におけるOPU由来の体外受精卵の移植頭数は、1997年に30,569頭、その後2002年に83,329頭に増加し、2015年には404,173頭と急速に増加しています(図2)。体内受精卵と体外受精卵の生産方法体内受精卵とは、過剰排卵処置と人工授精を用い、生体内で受精と発育、その後採取し、生産された受精卵です。過剰排卵処置に対する反応は供卵牛によって差があり、受精卵の回収成績にもばらつきがあります。移植の受胎率は新鮮卵、凍結卵どちらも安定しており、日本では50%程度を維持しています。一方、体外受精卵とは、OPU、食肉処理場由来の卵巣、生体または屠体の割去卵巣から卵子を採取し、体外受精技術を用いて移植可能なステージまで発育させ、生産した受精卵です。この体外受精技術には大きく分けて3つの工程があります。基本的に、OPU、食肉処理場由来の卵巣、割去卵巣から採取する卵子は未成熟な卵子であり、そのままでは受精することができません。そこで卵子を体外で受精できる段階まで成熟させる必要があります。この工程を体外成熟培養(IVM: In Vitro Maturation)といいます。また、精子にも受精能力を獲得させる操作が必要です。精子に受精能力を獲得させた後、成熟した卵子と共培養する体外受精(IVF: In Vitro Fertilization)を行います。その後、必要のなくなった精子や卵丘細胞を除去して、受精卵を移植が可能なステージまで培養、発育させます。この工程を体外発生培養(IVC: In VitroCulture)といいます。近年、OPU技術とIVF技術の普及から、OPU由来の体外受精卵の生産が増加しています。OPUとは、生体の卵巣から卵子を吸引採取する技術です。供卵牛の腟内にエコーのプローブを挿入し、エコー画面で卵巣を映し、画像を確認しながら腟壁越しに卵胞に採卵針を刺して卵胞液ごと卵子を吸引採取します。OPU技術を用いれば、過剰排卵処置に対する反応が悪い牛、妊娠牛、高齢牛からも受精卵を生産することができます。また、過剰排卵処置を用いた体内受精卵生産とは違い、分娩間隔の延長なしに、連続的な受精卵の生産が可能です。5 Breeders Journal