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概要

ABS breeders journal2017

受精卵移植の受胎率体内受精卵を用いた移植の受胎率は、農林水産省生産局の調査(2014)によると、新鮮卵で51%、凍結卵で46%です。また、菅原ら(2014)は新鮮卵で50.1%、凍結卵で50.0%と報告しています(表1)。表1.体内受精卵の受胎率受胎率(%)新鮮卵凍結卵報告者5146農林水産省生産局(2014)50.150.0菅原(2014)一方、体外受精卵を用いた移植の受胎率は、農林水産省生産局の調査によると、新鮮卵で41%、凍結卵で39%であり、体内受精卵に比べて体外受精卵の受胎率が低いことがわかります。しかし、体外受精卵といっても上記のように、生産方法が異なります。食肉処理場由来の体外受精卵を用いた移植の受胎率は新鮮卵で32~43%、凍結卵で25~48%と報告されています(表2)。OPU由来の体外受精卵を用いた移植の受胎率は、新鮮卵で37~38%、凍結卵で22~28%と報告されています(表3)。このように、体外受精卵でも生産方法の違いによって受胎率に差がみられ、OPU由来の体外受精卵を用いた移植では受胎率改善が大きな課題とされています。特に凍結卵の受胎率が低いため、多くの技術者は新鮮卵移植を推奨しています。表2.食肉処理場由来体外受精卵の受胎率受胎率(%)新鮮卵凍結卵報告者43.040.3家畜バイテクセンター(2012)-48.1菅原(2014)3225西寒水(2014)※性選別精液使用40.836.8谷澤ら(2013)※リピートブリーダーへの移植表3.OPU由来体外受精卵の受胎率受胎率(%)新鮮卵凍結卵報告者37.228.6菅原(2014)38.722.1平井(2017)体外受精卵を用いた移植の受胎率に影響している要因の1つに、受精卵の品質が挙げられます。食肉処理場由来の体外受精卵では、屠畜された複数の雌牛の卵巣をひとまとめにして処理することで、1度に多くの卵子を回収することができます。そのため、OPUと比較すると生産できる受精卵の数が多く、その中から高品質な受精卵を選別して移植、凍結に用いることができます。一方、OPU技術では、1度に多くの受精卵を生産することは難しく、高品質な受精卵のみを選別してしまうと、移植に必要な受精卵を十分に確保できない可能性があります。そのため、OPU由来の体外受精卵の中には、低品質であっても移植を実施している可能性が高く、良好な受胎率を得ることができないと考えられます。最近では、受胎能力の高い体外受精卵を選別するために、体外発生培養時に個別管理培養ディッシュ(大日本印刷)を用いた選別方法が研究されています。筆者らの研究(2017)では、このディッシュを用いて発生過程の形態観察および受精卵選別を行うことにより、OPU由来の新鮮卵移植で61.9%の受胎率が得られています。今後の課題体内受精卵や体外受精卵(食肉処理場由来またはOPU由来)は、それぞれ生産方法や受胎率が異なります。体外受精卵は、体内受精卵と比較すると凍結融解後の生存性が劣ること、また染色体数が異常であっても胚盤胞まで発生することがわかっています。そのため、体外受精卵では胚盤胞期で品質を評価しても、実際に受胎する能力を持つ受精卵であるとは限らないと考えられています。近年、日本国内でもOPU技術が急速に普及し、OPUでの卵子吸引技術や体外受精技術は比較的安定してきています。しかし、これらの技術で生産された体外受精卵を用いた受精卵移植受胎率をどのように向上させるかが今後の課題です。また、体外受精卵には、妊娠期間の延長、過大子、流産、難産の割合が高いことも問題であると指摘されています(Kruip et al, 1997)。これらの課題を解決できれば、過剰排卵処置を用いた体内受精卵の生産が困難な牛からも容易に体外受精卵の生産が可能となり、優良遺伝子を持つ後継牛の生産を効率的に行えると考えます。また、食肉処理場由来の卵巣から安価で高品質の体外受精卵を数多く生産できれば、発情を見逃した牛や長期不受胎牛に対する移植や追い移植を実施しやすくなり、繁殖成績改善に貢献できるでしょう。このように体外受精技術を生産現場で活かすことで、遺伝改良の促進だけでなく、効率的な個体生産を可能とし、安定した牧場経営に繋がると期待されます。ABSテクニカルサービス(TS)の利用これらの受精卵移植技術を用いた繁殖管理を行うには、繁殖生理の理解や人工授精・受精卵移植技術の向上が必要です。また、近年における乳牛は能力の向上が著しく、栄養・飼養管理がそれに追い付いていないことが繁殖成績を低下させる要因になっていると考えられています。そのため、効率的な牛群2017年9月6