ブックタイトルhoardsdairyman_2020_02

概要

hoardsdairyman_2020_02

牛群繁殖のシミュレーションペンシルベニア州立大学とコーネル大学の学生が、実際の農場で遺伝学の原理を応用して牛群の交配を行い、多くの知見を得た。アリソンヘリック、ヘザーヒューソンヘリックはコーネル大学の学生、ヒューソンは同大学教授過去からのすべての牛に関する育種上の戦略や知見を検討することは20歳の学生にできるだろうか。そして、酪農遺伝学や牛の交配がこれまでの数十年でどう変化しながら現在につながっているかを体感するにはどうすればよいか。ヘリック20歳を少し過ぎたばかりの大学生には、およそ夢のような話である。しかし、コーネル大学とペンシルベニア州立大学の学生には、まさにそういう体験をする機会がある。ペンシルベニア州立大学のチャド・デカウが開発した育種シミュレーションプログラムを用いて、私たち学生はある牛群について交配、淘汰に関して総合的に分析する課題を与えられた。学生は1学期にわたってそれぞれの牛群を管理し、交配と淘汰に関する自分の判断を週2回提出する。牛群管理について学生は全責任を持ち、牛群のあらゆる向上や進歩を左右する立場にある。当事者としての感想1つの牛群を遺伝の観点から探ることは、一見興味深くもあるがとてつもない作業でもある。白状すると、このシミュレーションを始めるときは、さほど時間もかからないだろうし、全体的な概念自体はかなりシンプルだろうと思っていた。すぐに思い知らされたのはプロセス全体の複雑さで、なかなかすぐには全貌を把握できず、一つ一つの判断を下すことができなかった。また、いかに私が牛の交配を理解しておらず学ぶべきことばかりであるかにも気づいた。乳牛遺伝学を活かした仕事に関心を持っている私であればなおのことである。シミュレーションの時期は1970年頃からで、その頃の牛の交配は乳量や成分量のほか種雄牛側の基本的な成績に基づいて行われていた。そのことは特に目新しい状況ではなく、現在も広く行われている手法だが、私がこのことを特に面白いと思うのは、私がこれまで、より「先進的な」ゲノム情報を用いた牛の交配ばかり学んできたからである。かつて、目に見える部分に細心の注意を払いながら、望ましい牛との交配をしていたのであろうことは明らかだった。ある種雄牛を何頭かの雌牛とペアにするときは、まるで当てずっぽうのようだった。公正な判断を下すのに必要な情報が十分に揃っていなかった状況から、技術的にも現在のように進歩していNM$NM$1,0005000-500-1,000-1,500-2,0001,0005000-500-1,000-1,500-2,000アリソンなかった時代に一生をかけて牛群管理の対策を遂行した人たちには頭の下がる思いである。できれば、シミュレーションに使われた牛の見た目の体格などがわかったほうが、もっと判断が下しやすかっただろう。表現型の特性、たとえば健康形質、乳量形質、体型などはこれまで乳牛選抜の土台として、ゲノム情報を用いて交配や淘汰の判断を下すことと同様に重視されてきた。約40年の期間を設定したシミュレーションについて、最初から終わりまで駆け足で概観してみたい。交配を行えば必ず、雄か雌の子牛や乳代を手にするが、売却や死亡で牛を失うこともある。シミュレーションが終わると、全牛群をランク付けして結果を比較し、特定の分野で優れていた牛群はその成果を評価してもらえる。評価対象の形質あるいは指標としては、総収益、無角またはレッド牛の割合が最も高かったもの、劣性形質が最も低かったもの、成分量の多いものあるいはネットメリット(NM$)が高いものが挙げられる。私は早い段階で、飲み込めないほどの量を頬張ってはならないのだと知った。つまり、あれもこれもと手を広げすぎても結局何一つものにならなかったのである。目標を絞るシミュレーションが半分ほど終わったところで、自分の牛群をどうしたいかがはっきり生涯ネットメリットの推移クラス平均198019811982198319841985198619871988198919901991199219931994199519961997199819992000200120022003200420052006200720082009201020112012想定生まれ年全学生対象の生涯ネットメリットの推移アリソンの牛群198019811982198319841985198619871988198919901991199219931994199519961997199819992000200120022003200420052006200720082009201020112012想定生まれ年100ホーズデーリィマン第397号（2020）